「筆が伝える伝統 × テクノロジーが広げる未来」
CRAFTED FUTURE|友禅アートブラウス
LIVING CRAFT
日々に息づく、伝統美。
現代の暮らしに息づく、伝統工芸を。
私にとって、服づくりとは、素材や技法に宿る物語を現代に翻訳する営みであり、伝統工芸は私にとって“素材以上”の存在です。
単なる装飾ではなく、時を超えて引き継がれる精神、美意識、ストーリーが息づいています。
伝統工芸は、かつて「今」の中にありました。
暮らしの中で使われ、買われ、選ばれ続けてきた、その時代の“商品”だったはずです。
しかし今、多くの工芸は文化的価値だけを背負わされ、商品としての役割を見失っているようにも感じます。
昨年の武州正藍染に続く今回の取り組みも、私たちの変わらぬ願いに基づいています。
それは、「伝統工芸を、現代の商品として再生する」こと。

静けさの中に意志を秘めるカラーの花。芯のある美しさは静かに力強く咲く。
ある海外のバイヤーが言いました。
「なぜ日本人は、普段は“和の暮らし”をしていないのに、展示会でだけ“和”の商品を持ってくるのですか?」と。
リアルな日本の生活に即していない製品には、海外の人々も違和感を覚えるのです。
だから私たちは、今の暮らしに自然に溶け込み、活きる伝統工芸のかたちを模索しています。
今回、東京手描友禅の技術を活かして完成させた「友禅アートブラウス」は、その一つの答えです。

陽光に透けるやわらかな生地が風に揺れる。そこに咲くのは、職人の手が描いたミモザの花。
尊さとしなやかさ、そのすべてを讃えるように。
着物ではない、でも“友禅”であるということ。
着物の支出額は1970年代から減り続け、今や私たちの日常着は欧米スタイルが主流です。
「文化」は守るべきものです。でもそれだけでは、技術や継承の芽は枯れてしまう。
だからこそ、私たちは「着物以外のフォーマット」で、東京手描友禅の魅力を活かす方法を模索しました。
洋花、ミモザとカラーを描いた手描き原画は、糸目糊や胡粉ぼかしといった伝統的な意匠技法を駆使し、職人の手によって描かれた一点ものです。
それを高精細スキャナーでデジタル化し、エプソン社のハイエンド捺染機を用いて、ブラウス型紙ごと直接プリント。
デジタルは効率化の道具ではありません。
職人の筆致や呼吸、感情のこもった「線」の魂を壊さず、現代社会に届けるための“翻訳”です。

布地に筆が落ちたときの緊張感、滲みの一粒にさえ宿る静けさ
若手女性職人集団|ユキヤ株式会社による手描友禅。その美しさを残すために、デジタル技術は選ばれた。
普及と希少、その両輪で伝統を未来へ。
このプロジェクトでは、「普及価格帯」の“入り口”としての製品展開を実現しました。
しかし、ここが終着点ではありません。
今後は、対となる“頂点”の展開——アート性や希少性を追求したものの製作にも取り組んでいきます。
普及と希少。入り口と頂点。
この両輪によって、伝統工芸の持続可能な未来を築いていきたいと考えています。
どうぞ、これからの展開にもご期待ください。